1997年12月27日(土)
集合時間よりかなり早く港へ行くと、それらしき船がみえない。まもなく、カーフェリーがやってきて大勢の旅行者とトラックなどを降ろしていった。旅行者はみな大きな荷物を持っていたので、たぶん、南のほうの遠くの町からやってきたようだ。
いったいどの船に乗るのだろうと思っていたら、そのフェリーに乗っていくのだった。船のほとんどの部分を占める車用のスペースを無駄にして、数十人のペンギンツアー一行を乗せて、船はコロニーのある島に向かった。船内はちょうど東京湾フェリーの中の雰囲気と似ていて、飲み物とスナックを売る売店があり、何箇所かにテレビがあって、それでひまをつぶす。島に着くまではこれといってめずらしいものはない。
やがて島に近づき、皆がやっと着いたかと出口付近に集まり出した。ふと、海を見ると流線型をしたものが、水面をジャンプしている。ややっ、もしやあれは。。。。まぎれもなくペンギンだ。
ちょっと興奮して、おおペンギンだ、ペンギンだと近くにいた子供に教えてやったが、子供の方は割と冷静にうなづくだけで、はしゃいでいるのは自分だけだった。とはいえ、船が接岸するときには島にうじゃうじゃいるペンギンの姿が見えて、みんなわくわくしていたような気がした。
島にはペンギンがうじゃうじゃいるのだが、人間が歩けるのは波打ち際から10mくらいのところまでで、それより中はロープが張ってあって入れないようになっている。
ここらへんにいるペンギンは、マゼランペンギンというやつで体長は80cmくらい。ペンギンはロープの内側で3-4m間隔で穴を掘って巣を作り、子供を育てている。食べ物を獲ったりするのに海に行かなくてはいけないから、ロープをくぐって海に出て行くペンギンや帰って来るペンギンが行ったり来たりする。砂浜ではなくごつごつした石ころなので、短足のペンギンにとっては歩きにくい。よたよた歩きながら、ときどきベチャっところんだりするところがかわいい。ロープから出るときは人間のいないときを見計らってでていく。帰るときも同じだ。
人間が近づくと、ものすごい勢いで逃げていく。とはいえ極端に恐れているわけではなくて、ある程度の距離があれば安心してすごせるらしい。むしろ好奇心旺盛でこっちをじっと見ていたりする。観光客のうちの何人かは真剣に写真を撮ろうとしているので、そろそろと近づいていくのだが、どうしても近くまでは寄らせてくれない。
そういう地道な努力を踏みにじるようにコンパクトカメラを持ったガキんちょが突然ダッシュして近づこうとする。そうするとペンギンの方もどひゃーっとパニックになって必死で逃げる。しかし所詮ペンギンなので飛ぶわけにもいかず、ある程度まで近づかせてしまうから、強襲作戦は成功したとも言える。しかし、そこまでやるか。ペンギンの身にもなってみろよ、ガキはこれだから困る、と思ったらおじさんもやっていた。いかにもそーゆーことをやりそうな脳天気そうなおじさんだった。
ロープの外では警戒心の強いペンギンも、ロープの中には人間が入ってこないということがわかっているらしく、ロープ際でも中ならば平然としている。どういうわけかロープ際に巣を作っちゃったペンギンというのもいて、そういう巣は近くから人間に観察されてしまうことになる。ロープ際の方が海に近くていいや、とでも考えたのだろうか。
「バックパッカーパラダイス」ではアルゼンチンでペンギンを見に行ってペンギンの背中に触ったりしていたようだし、Lonely Planet には、追いかけると逃げるがじっと座って待っていればもともと好奇心があるので近寄ってくるなどと書いてあるが、あまりそういうようなことは無いようだった。でも、圧倒的な数のペンギンといい巣穴がぼこぼこあるところといい、やっぱりきてよかった。