1月4日

今日は別にすることがない。細かい用事がいくつかあるだけだ。ゆっくり起きて、銀行へ行って両替して、マラケシュ行きのバスの切符を買って、ロイヤルモロッコエアーに行ってリコンファームしようとしたら必要ないと言われた。さて、あとはバス旅行のための食料でも買えば終わりだ。

メディナ以外に行く場所もないのでメディナに行った。10個くらいのケフタ(肉だんご)をパンにはさんだサンドイッチを14DHで食べてあとはほとんどカフェでぼーっとしていた。いま着ているセーターはぼろいのでセーターを買おうかと思ったが値段を聞いてみると予想より高いのでやめた。お土産によさそうな牛の角のチップでできたキーホルダーがあったが一個10DHもするのでやめた。帰りがけに、ピーナッツ500グラムとダッツ(なつめやし)1キロと水を買ってホテルに帰った。

ところで、世界一複雑なフェズのメディナだが、迷ってしまうのは本当だ。 きのうメディナから帰ろうと思って、もと来た方向をめざしたのだが、ガイドから逃げようとしてガイドと違う道を選んで歩いているうちに迷ってしまった。大体の方向感覚でメデイナの西側の入口を目指して歩いたのだが、そのうち変な所からメディナの外に出てしまった。いったいどの辺に出たのだろう。「歩き方」の地図を見てよく考えるとメディナの北側に出てしまったようだ。ガビーン。おそるべしフェズのメディナ。最初はこれならなんとかなると思ったんだけどなあ。しかたがないので太陽の向きを頼りにして、もう一度メディナの中に入ってブージェルード門を目指すことにした。

そういうけだから、迷わないためにガイドを雇うというのはそんなにわるくない考えではある。

こんなこともあった。夜、レストランへ行こうとしてホテルを出ると例によって男がレストランを紹介するといってつきまとう。別に頼んだわけでもないのだが、くっついて離れない。自分で適当な店に入ってしまおうかと思ったが、そもそもフェズの新市街には高いレストランしかない。昨日食べた所もメニュー形式で42DH、単品でクスクスが34DHだった。安い店に案内してくれるかと思ってついて行った。何件か行ってずいぶん断った。そりゃそうだ。ガイドの取り分も上乗せするのだもの、高いに決まっている。そのうち、裏のほうにあるひなびた安レストランに連れていかれた。レストランとは言えないような食堂だった。あまりいいものは食えそうにないがガイドが離れないのでここに決めた。

煮込み料理を2皿食べて、最初30DHといわれたがすぐ25DHになった。なんだそりゃと思っていると、店を出てから「俺が30DHの所を25DHにしてやった」という。うそつけ。あれはどう考えても10DH位の料理だぞ。ばかたれ。「店を紹介してやったし、安くなったんだから、5DH寄越せ」という。あほか。「なにを言ってんのかわかんなーい」と言って無視した。

帰り道、果物売りがいたのでオレンジを買おうと思った。大きなやつを3つ秤にのせると1キロと200グラムだった。重さを測る天秤についている洗面器にオレンジをのせて「よし、これで幾らだ?」ときくと10DHだという。あほか。「信じられない」と言ってそのままにして歩きだした。すると例のガイドがあわてて走りより「6DHだ、6、6でいい」とぬかす。もう遅いわい。ほれみろ、お前のせいで、果物売りのおやじまで損したではないか。なんで人の売り買いのじゃまするんだよう。

よく考えたら、果物売りの親父もレストランの親父も、いきなりやってきたガイドから「この日本人の払いからいくらいくら俺にくれ」なんて持ちかけられているのかもだな。なんてこった。

1月5日

朝、5時45分に起きて、6時半のバスに乗るためにターミナルへ行った。マラケシュへ向かうバスはCTMのもので、民営のバスより高くてバスは上等だ。ターミナルでは、まず、荷物の計量が行われた。民営のバスでは量りもせずに適当に金を請求するのだが、ここでは、まず重さを量って、それをチケットの裏に書いてもらう。それを持っていって窓口で金を払うと荷物の引換券とタグをくれるのだ。荷物の引換券はバスを降りてから荷物を貰うときに必要だった。それから、座席もちゃんと決まっているのだった。

バスは7時に出発した。フェズよ、さようなら。ここはそんなに好きでなかった。人気ナンバーワンというのが信じられない。メディナに宿をとればよかったのかもしれないし、迷うのを恐れるあまりメディナをそれほど歩いていないのかもしれない。

バスでは、フェズとマラケシュの中間にある街、ベニメラルの大学のフランス文学の先生だという人と隣になった。大学の先生だというのにまずびっくり。初めて会うインテリだ。いかにも知的そうな落ちついた感じの人だった。彼が「日本人は休みが嫌いで働くのが好きだとテレビで見たが本当か」と聞いてきた。おいおい。「いや、みんな休みが好きだ」と答えておいた。彼はベルベル人でベルベル語とアラブ語が二つと(クラシックアラブと言っていた。アラブ圏標準語とモロッコ方言のことか)、それから、フランス語がペラペラで、英語が少しできる。

彼の話によると、モロッコにはもともとベルベル人が住んでいて、そこへアラブ人がイスラム教を持ってやってきたのだそうだ。「歩き方」にもマグレブの歴史が書いてあるが、要するにベルベルがもとから住んでいて、彼らはローマやオスマントルコやスペインやいろいろな国によって支配されていたのだ。そういうわけだから、ここは純粋なアラブではなくヨーロッパの香りがプンプンする。その先生曰く「アラブ語よりベルベル語の方がポピュラーなんだ。私の両親はアラブ語が喋れない。私は勉強してアラブ語が話せるようになったんだ」のだそうだ。

彼の奥さんも大学の英語の先生で、彼よりも英語がよくできるそうだ。彼の話では15%位の人が大学へ行くらしい。たいしたものではないか。問題は彼らに仕事がないことだと言っていた。モロッコ人はフランスやスペインに行って働いて、フランス人やスペイン人と結婚したりするらしい。日本人の男は国際結婚するかと聞くのでとても少ないと答えておいた。エルフードでモロッコ人と結婚した日本人女性の話をしたら大変驚いていた。最初の質問は「彼の仕事は何だ?」だった。レストランだというと少し安心したようだった。

彼には5人も子供たちがいて、「彼らを大学に行かせたいか」と聞くと、「ああ、金を出す用意はできているよ」と答えた。幸せな子供たち。「女の子もか」ときくと、「そうだ」という。「女は働くべきでないという考えはないか」ときくと、「そんなことはない。女は時として男よりいい働きができることもある。教師とかね」とのことだった。「日本ではどうか」というので、「古い考えの人もいるが、いま変わりつつある」と答えておいた。「モロッコも変わりつつある」。そう言っていた。そう、ここは純粋なアラブではないのだ。

バスで9時間。4時すぎにようやくマラケシュに着いた。これがマラケシュかあ。なんとなく都会だというのがわかる。ターミナルからしてとてもりっぱなのだ。

バスから降りるとさっそくガイドがいて、「ホテルはこっちだこっちだ」という。ホテルはジャマエルフナ広場の近くにしようと決めていたので、かまわず歩きだした。そいつはターミナルの近くのホテルに連れていこうとするのだが、こいつもかなりしつこかった。客がいなくてたいへんなのかしらん。

ジャマエルフナ広場

 

ジャマエルフナ広場

ジャマエルフナ広場につくとちょうど屋台が出始めるころだった。カフェで一休みして、それから、ホテルをさがした。部屋を確保して、広場へ行った。うーん、とてもいい雰囲気だ。なんというかアジアっぽいんだな。僕は一目でここが好きになった。屋台がいっぱい出ていて、おいしそうな匂いがしている。うーん、何だか血が騒ぐなあ。さっそく、ハリーラを一杯食べた。1.2DHだった。安いなあ。それから、歩く間もなくカバブを焼いている屋台のおじさんに来い来いといわれつかまってしまった。だって、おいしそうなんだもの。これは10DHだった。それから、貝のスープのようなものを売っていたので一杯もらった。かたつむりだった。

メインは魚フライの店だ。ブロックみたいな魚フライとポテトフライを食べた。仕上げはオレンジジュース。うまいんだな、これが。本物の絞りたてのオレンジジュース。3DHだった。ここではどの屋台でも同じ値段なのだ。


1月6日

ジャマエルフナ広場

 

ジャマエルフナ広場

今日はたくさん買い物をした。まずは皮のサンダル。115DH。それからジュラバ、300DH。これはちょっと高かったかもしれない。あっさりと決まってしまったから。それから皮のデイバッグ。絨毯に使うような刺繍の入ったやつだ。これは僕のポーチバッグとペンとスキーツアーのおまけでもらったポンチョをつけて150DHだった。このポンチョはピンクとグリーンのハデハデな色のやつで、素材はビニールのペラペラなものだが、真っ先に欲しがった。

金がなくなったので、昼飯を食って、あとは銀行が開くまでカフェのテラスから広場の様子をぼんやり眺めていた。ベルギー人のあの双眼鏡でもあれば楽しめるだろうなんて思った。

金を両替して、再びスーク探検に出かけた。サフラン50グラムで20DH。ミントティが10DH。ミュージックテープ一本20DHを3本を買った。そのうち一本はなぜかコーランのテープだ。ミュージックテープ売りはたくさんあるのだが、どこでもモロッコギャルが目を輝かせて聴いている。大好きなスターとかいるんだろうか。そういうところのギャルは全然ものおじせずににこにこ笑って話してくれる。

夜は例によって屋台で食事だ。今日はクスクスを食べた。ところでこのクスクスは代表的な料理だが、僕はあんまりおいしいとは思わないんだなあ。何回か食べたけれどいつもそう思った。

モロッコは食べ物に関してはとても質素だ。そもそも種類が少ない。クスクス、タジン、カバブ、ケフタくらいではなかろうか。ハリーラはどこで食べてもおいしくて、とても気に入ったが、屋台の揚げ物もとびきりうまいわけではないし、…

今日はこれを買った:

  1. 皮のサンダル 115DH + ペン
  2. ジュラバ(毛) 300DH
  3. 皮のバッグ 150DH + ペン + ポーチバッグ + ポンチョ
  4. サフラン50g 20DH
  5. ミントティー 10DH
  6. ミュージックテープ(3本) 60DH
クルアーン
クルアーン(コーラン)のカセットテープ
    PAGE TOP